蝶のいた庭の感想~美しくも異常な隔離世界の果てにあるものは

あらすじ・概要

庭師という男のもとから、十名以上の若い女性たちが救出される。FBI特別捜査官のヴィクターは、拉致されていた女性の中心人物とされる女性「マヤ」に事情聴取を行う。

滝や小川や崖があり、蝶が飛びかう楽園のような「ガーデン」。外界から隔離された温室に監禁された女性たち。マヤの口から語られるのは、ヴィクターの想像を遥かに超える美しき地獄だった。

ネタバレありの感想

独特な切り口で語れる事件の真相

本書を読んだ感想として、その斬新な切り口に脱帽した。監禁された少女たちの物語というと、基本は監禁された少女を如何にして救出するか、もしくは脱出するかというものになるのだが、本書では既に少女たちは救助されている。

通常救出された後というのは安心感と幸福に包まれているのだが、本書では謎と緊迫感、そして不安感が漂っている。原因としては、本書のもう一人の主人公「ヴィクター」が「ガーデン」の事情を知らないこと、そして語り手であるマヤの得体のしれない態度からだ。

マヤは素直に口を割ろうとせず、ヴィクターもそれを承知しているため、いきなり確信には触れず、事件とは関係がないマヤの過去から明かされていく。

蝶に近づくが如く、少しずつガーデンの真相へと迫るのは、本書独特の魅力をかもし出している。また、事件に関係がないと思われたマヤの過去が、結果的には物語に深く関わってくるのは素晴らしい構成だ。

異常性癖で満ちた美しくも残酷な世界

16歳以上の少女たちを拉致し、背中に蝶の入れ墨を刻む庭師。彼女たちと性行為に及ぶも、21歳になったら自ら殺して壁に飾るというのは、精神異常者としか言いようがない。

だが言動は紳士的であり、少女たちが予期せぬ死を迎えたときなどは深く悲しむなど、彼なりに少女たちを愛している。

それゆえに紐解かれるガーデンは庭師の狂気的な愛で満ちており、凄惨な猟奇事件に美しさと幻想的な面を与えている。

ラストについて

本書には得体の知れない恐怖や異常性で溢れている。だが注目すべきはヴィクターとの対話や、ラストの出来事を通して、主人公であるマヤに救いが訪れるという点だ。ガーデンから救出されたからマヤが救われたのではなく、その後の出来事で救済されるというのは、本書ならではのサプライズだ。

後味の悪い最期になると想像していただけに、読後感は不思議なものとなった。

庭師や、その息子たちの異常性。マヤたち囚われた少女たちの悲惨な日々。ヴィクターたちFBIの奮闘。本書にはいくつもの見どころがあったが、特筆すべきはやはりラストと言わざるをえないだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA